薬剤師の生涯学習の考え方は、欧米各国で最近大きくかわりつつあります。1994年ウイスコンシン大学のA.Hansonが提唱したように、これまでのような受動的で単純なCE(Continuing Education:生涯研修)から、能動的でしかも自らの薬剤師業務に適する研修を目指すCPD(Continuous Professional Development:生涯職能開発)へと移行しています。
このCPD提唱の発端は、米国で薬剤師の免許更新制のために研修単位を取得する動きが活発になるにつれて、単位を取って更新を受けることだけを目標とする傾向が蔓延し始め、肝心の能力・適性の向上とその確証があやふやとなったためです。
CPDの定義は、2002年9月のFIPの声明によれば「個々の薬剤師が、専門職としての能力・適性を常に確保するために、生涯を通じて知識、技能、態度を計画的に維持、発展、拡充するという責任行為」とされています。これまでのようなCEと比べて、CPDは薬剤師業務によりポジティブな変化をもたらし、医療のアウトカムをより改善するものと考えられます。
薬剤師の学習の目的は、単位や認定の取得にあるのではなく、患者のために役立てる能力を身につけることにあるからです。
CPDのプロセスは下記に示すような、5ステップのサイクルからなっています。 すなわち、個々の薬剤師が自らの学習状況(実力)とこれからの目標についてまず自己査定(1)を行い、目標を達成するために自ら学習計画を立案(2)、計画を実行(3)、実施したCPDをポートフォリオ※として記録(4)に残し、結果を薬剤師職能の向上と患者の利益向上の面から評価(5)します。 教育・研修は与えられる場面が多いのですが、知識・技能は本来自ら獲得すべきものであり、あくまでも自己責任により行うものであるといえます。 ※ポートフォリオ:学習者が、学習で得た知識や体験を集めたもので、各自の総括記録簿といえます。各プロバイダ―の交付する「研修手帳」などを利用するのも良いでしょう。数値化できない成長を評価できる記録になるものと期待されます。 |